第一章 日溜まりの中で

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そう言って看護師が部屋を出て行く。吸入器から出る煙を吸いながら、窓の外を見ていた。 (もう夜か…。今頃は家でテレビ見ながらゴロゴロしてたんだろうな。) 今年の夏休みは家族で揃って北海道のじいちゃんの所に帰る予定だったのに俺の入院のせいで中止になった。 まだ幼稚園児である弟は泣いていた。 俺が入院する事に、ではなく、じいちゃんのところに行けなくなったから。 「…」 そっか。だからさっき瞬介くん見た時に変な感情を抱いたのか。 俺は隣のベッドで小さく寝息を立てている瞬介くんを見た。 「瞬ちゃんも寂しいよな。」 吸入器は未だに煙を吐き出している。
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