特待生

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―――――――† 魔導の才能があった。いや、生まれつき魔力量が多かった。 孤児院でも、魔導士の資質があったのは自分とミーナだけだった。 それを知るとミーナはすぐさま魔導士となるために努力を始めた。嫌いな勉強も、訓練も、持ち前の根性でこなしていた。 そしてついには、大陸でも名だたる魔導学園に入学するまでになる。 彼女がそうまで魔導士になる理由はひとつ。金の為だ。 魔導士、それも名門校を卒業するほどの者となれば働き先は山のようにある。そしてそのどれもが高報酬。 孤児院というのはお金がない。特にユーノ達が育った孤児院に限った話ではないが、身よりのない子供を集め、育てるというのはほとんど慈善活動なのだ。 よほど奇特(きとく)なスポンサーでもいない限り、金銭面の問題は一生ついてまわる。 1流の魔導士となり、金を稼ぐ。育ててくれた院長の為に、同じ境遇にある子供達の為にミーナは金が欲しかった。 その考えに共感したのも本当だ。本物の両親に興味はない。自分にも才能はあったし、孤児院にも感謝している。ミーナと同じように、魔導士となって金を稼ぐ、それは素晴らしいことだ。 だが自分は、ユーノ・バレンタインは、彼女ほど綺麗ではない。心の底から、孤児院の為と魔導士になりきれはしない。 何度もいうが、孤児院に感謝しているのは本当だ。ミーナに共感もした。 だがどこか他人ごとのように感じていたのも事実。 その“空虚”がなんなのか、それは自分自身でも分からない。いや、“わからなかった”。 ミーナの知り合いだという少年。銀色の少年。同性のユーノから見ても綺麗な顔立ちをした少年。 ミーナとレヴァンテインの男が争っていたときにいた少年。 一目みたあの時から、あの空虚が“なにか”で満ちるのを感じた。 言葉に言い表せない“もの”がユーノを刺激した。 気付いたら、ユーノは銃を銀色の少年に向けていた。 気付いたら、ユーノは言葉を口にしていた。 「グレイ」 気付いたら、ユーノは 「僕と戦いませんか?」 心の底から笑っていた。
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