第十三章

6/22

785人が本棚に入れています
本棚に追加
/280ページ
出産する決心をした私は、大学を辞めた。 休学という手もあったが、未婚の母になる事を家族以外誰にも知られたくなかったからそう決断したのだ。 退学する事を告げると、幼なじみの真理ちゃんや黒ちゃんはその真意を問いただしてきた。 私は母と暮らすため、埼玉の大学へ編入すると嘘をついた。 「家の事情やったらしゃあないな…」 そう言って誰も疑う事なく、私を送り出してくれたのだ。 その頃兄も、母の元に身を寄せるようになった。盲目になった櫻井先生を見捨てるような真似をしたのは、もちろん私が妊娠してしまったせいだ。 兄はあれだけ世話になった櫻井先生に、一方的に別れを告げ、埼玉にやって来たそうだ。 「カズさんの事許されへんかったからちゃうねん。一緒におったらお前の事やお腹の中の子の事話してまいそうやったんや… まぁ、俺が働いて、お前やオカンを守っていきたいってのもあったしな!」 兄にも迷惑をかけてしまってる… 私は母と兄に改めて詫びを入れた。 .
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

785人が本棚に入れています
本棚に追加