第十三章

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たまたま私がバイトをしているバーに、クラシックを専門に扱うレコード会社の社長が訪れたのだ。 私のピアノを聴いた社長は、私をテーブルに呼び寄せた。 そういう場合、たいていは愛人にならないか?とか、一度だけベットに付き合えとか、理不尽な誘いが待っていた為、私はまたかと思い、わざと仏頂面でテーブルに向かった。 しかし、そのテーブルにはとてもにこやかな紳士が座っていて、この店のオーナーまで居合わせていたのだ。 私は慌てて営業スマイルを作って、勧められた席に腰を下ろした。 まずオーナーがその紳士を私に紹介してくれた。 「郁恵ちゃん、こちらオリエンタルレコードの社長、永瀬様よ。ご挨拶なさい」 「は…はい!初めまして、加藤郁恵と申します!よろしくお願いします」 永瀬というその社長さんは、頷きながら私に握手を求めるように右手を差し出した。 .
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