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廊下は、やっぱり騒がしい。授業が終わって昼休みだからだろう、人は多くて歩きにくいし…自分の教室まで、あと何分掛かってしまうのだろうか。
「なんだよあの先生、今日に限って実験とか…」
「ちゃんと保健室行ってね、なんなら私も一緒に行くから、ね…?」
「ありがとうゆうちゃん…本当に良い子、大好き!」
「もー、そういうことは簡単に口に出しちゃダメなんだってば」
俺は2人の会話を聞きながら小さく欠伸をした。宏規はさっきの授業中に火傷をしたらしい。担当の先生が直接触るな、と忠告していたにも関わらず、熱したばかりの試験官に触れて。相変わらずアホだ。軍手を着けているつもりでいた、とか言っていたけど…どちらにせよアホなことに変わりはない。
2人の会話に少し入りつつ廊下を歩いていると、急に道が塞がれた。俺が立ち止まったことにより、後ろを歩いていた2人も少し戸惑ったように立ち止まる。ゆうが俺にどうしたの、と尋ねようとしているのを感じながら、目の前に立ちふさがった人間を見た。…あの金髪だ。
「お、金髪君じゃないか!どうだいその後!」
「は?…あ、え…順調、です…?」
「そうかそうか、それなら良かった!ただしこいつはあれだ、何しろハイスペックだからな、なかなか落としにくい…」
「おい黙れそこのアホ。余計なこと喋ってんじゃねえよ殴るぞ」
「すいませんでしたごめんなさい殴らないでください」
「……え、コント?」
誰がコントだ、誰が。この金髪、俺を舐めているんだろうか。こんな突然意味のわからないことを言いだすような人間とコントをやる暇なんて俺にはないというのに。
ただ突然親しげに話し掛けられて、金髪は金髪で混乱している様子だった。眉間に皺を寄せながら、先程の会話の意味でも考えているのだろう。少し、金髪が哀れに感じた。
「…えっと…どうしたの?こんなところで」
「あ…いや、先輩が見えて…」
「そういうこと…あ、そっか。今お昼休みだもんねえ…」
何かを考え込んでいる金髪に、ゆうが遠慮がちに尋ねる。俺が見えたから、なんなんだ。ゆうは納得したみたいだが、俺にはよくわからなかった。
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