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「じゃ、まあ俺たちは先に行きますか」
「そうだね、邪魔しちゃなんだもんね!」
「頑張りたまえ金髪くん!それじゃあまた後で、ハイスペック!」
「………は、」
展開が急だ。
俺の視界には、2人の背中と、金髪の男と、何故かそれだけしか見えなかった。
…とりあえず、後で宏規を殴ることだけは決意した。
「…あの、先輩、」
溜め息を吐く俺に遠慮がちな声が掛かる。金髪からだ。
こいつはこいつでこの急展開に困っているらしい。なんとなく苦笑いをしながら、俺のブレザーの裾をきゅ、と引っ張ってきた。
その動作が何を意味しているのか俺にはよくわからなくて眉間に皺を寄せていると、金髪は曖昧だった苦笑いを完璧なる苦笑いに変えて、俺にこう言った。
「もし良かったら…ご飯、一緒に食べませんか」
「ご飯?」
「はい、一回くらい良いでしょ?あの人たちも行っちゃったし…俺が奢るんで」
「あー…んー……」
「ダメっすか?」
確かに2人には置いていかれた。今から教室に行ったとして、あの2人がそこで食べているとは限らないし、今この金髪と一緒にいれば、昼飯代が浮く。でも宏規のアホな会話にゆうが1人で付き合っているのかと考えると、胸が痛む。どうするべきか。
悩む俺をじっと見つめる金髪は、なんだか従順な犬のようで、少しだけ可愛らしさを覚えた。
「…食べるだけなら、」
「やった!」
「食べたらすぐ戻る。あと、ちゃんとお前の奢りだからな」
「はい、もちろん!」
ゆうには申し訳ないが、今日くらいなら許されるだろう。何よりこんなに嬉しそうな顔をされたら、断ることもできなくなる。
何か大切なことを忘れている気がしたが、あまり気にはしないで、購買へ向かうことにした。
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