受難。

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一番最初に目に入った色は、明るすぎる茶色だった。いや、ここまでくると金なのか?少しくすんだ金色に、多分染められている髪。 俺はその色に一瞬驚き目を見開く。扉を開けた人間も、まさかまだ人が残っているとは思っていなかったのだろう、同じように驚いているみたいだった。それにしても一体誰なのだろうか。同学年にこんな髪色をしている奴はいないはずだし…ということは他学年だろう。だとしたら、どうしてこの教室へ来たのか…。もしかしたら、ゆうの追っかけなのかもしれない。ゆうは可愛いから、たまにいるんだ、ストーカーじみた奴が。もしそうだとしたら、とりあえずぶん殴っておこう。 「…先輩、」 「は?」 「こ、近藤先輩…?」 「…そう、だけど。君、誰?」 長い間沈黙が続いていた。お互い見つめ合ったまま。なんとも、おかしい光景だと思う。俺は相手の意図がよくわからないまま目を細めた。と、突然聞こえた声に、俺はまた少し驚きつつ、思わず聞き返してしまった。今、先輩って言ったよな…ということは、年下なのか。どうして俺の名前を知っているんだろう。 「あー、えっと、…俺のこと、覚えてないすか?同じ中学で、一応同じ部活だったんだけど…」 「……ごめん、ちょっと思い出せない。俺、あんまり部活行ってなかったから、」 「…だ、よな…すいません、突然来ちゃって。お邪魔しました。」 そう言って、金髪くんは扉を閉めた。足音がだんだん遠くなっていく。なんだったんだろうか。 俺と同じ中学だったと言っていたが…どうも思い出せない。あんなに目立つ見た目をしているなら、どこか記憶の片隅にでも残っていそうなものなのだが。…ああ、髪は高校に上がってから染めたのかもしれない。 だがもう金髪くんに会うことはないだろうし(もちろん彼がゆうの追っかけにならない限りだが)、きっと思い出すことなどできないだろうから、彼のことを忘れることにした。とにかく、帰ろう。外がすっかり暗くなってしまった。そう思いながら、俺は教室を出た。 次の日、また彼に会うことになるとは知らずに。
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