本気。

3/5
前へ
/15ページ
次へ
ぐい、と、不意討ちの力強さが俺の体を少し後ろへと倒した。 「う、ぉ、……呼んだのって、君?」 なんとか持ちこたえつつ、俺は振り向き相手の顔を確認する。金髪だ。茶髪っぽい金髪。どこかで見た色。前髪がだらんと左目を覆っている。うわ、邪魔そう…。まあ、俺も長いほうだと思うけど。 「………」 「………」 何も話そうとしない、金髪。それでもしっかり握られている右腕。ちょっと…握りすぎだ、痛い。 「…腕、痛いんだけど」 「あ、…すいません、」 「別に、良いよ。…で、俺に何か用事?」 「………」 痛い、と口に出せば、右腕はあっさりと解放された。握られていた箇所が少し赤くなっている。俺はそれを見て眉を寄せつつ、また金髪に目を戻した。また黙り込む、そして沈黙。俺の耳には、休み時間特有の心地よい雑音しか入ってこない。一体、何の用があると言うのだろうか。第一に、こういった雰囲気の人間と関わった覚えが全くないわけで。…いや、待てよ。あるような気がしてきた。いつだったか… 「き、昨日は…」 「…は」 「昨日は本当にすいませんっした…まさかいるとは思ってなくて、それで…」 「…あ、あー。昨日。昨日の金髪、」 思い出した。そういえば昨日、見たんだ。この金髪を。色を。だから、何かが引っ掛かったような、妙な感じが残っていたのか。やっと、納得した。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加