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ぐい、と、不意討ちの力強さが俺の体を少し後ろへと倒した。
「う、ぉ、……呼んだのって、君?」
なんとか持ちこたえつつ、俺は振り向き相手の顔を確認する。金髪だ。茶髪っぽい金髪。どこかで見た色。前髪がだらんと左目を覆っている。うわ、邪魔そう…。まあ、俺も長いほうだと思うけど。
「………」
「………」
何も話そうとしない、金髪。それでもしっかり握られている右腕。ちょっと…握りすぎだ、痛い。
「…腕、痛いんだけど」
「あ、…すいません、」
「別に、良いよ。…で、俺に何か用事?」
「………」
痛い、と口に出せば、右腕はあっさりと解放された。握られていた箇所が少し赤くなっている。俺はそれを見て眉を寄せつつ、また金髪に目を戻した。また黙り込む、そして沈黙。俺の耳には、休み時間特有の心地よい雑音しか入ってこない。一体、何の用があると言うのだろうか。第一に、こういった雰囲気の人間と関わった覚えが全くないわけで。…いや、待てよ。あるような気がしてきた。いつだったか…
「き、昨日は…」
「…は」
「昨日は本当にすいませんっした…まさかいるとは思ってなくて、それで…」
「…あ、あー。昨日。昨日の金髪、」
思い出した。そういえば昨日、見たんだ。この金髪を。色を。だから、何かが引っ掛かったような、妙な感じが残っていたのか。やっと、納得した。
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