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途端に、浜は大変な騒ぎになりました。が、皆、取った物を持ち帰ろうとするのでなかなか逃げ足が伸びません。
「はよ、はよ逃げ!」
黒い壁はあっと言う間に迫り、ごうごうと唸りながら、辺りをがぶっと呑み込みました。
家をも越える大きな波は、猫様のお宮の麓までザッバリ打ち寄せ、何もかも引きずり込むようにして沖へと引いていったのです。
裏山のてっぺんでは、ネネコのおとさとおかさ、それにネネコとミオが身を寄せ合って高波が来るのを見ました。
そんな彼らの周りには、たくさんの猫達が、家族を守るように取り巻いていました。
――家々は軒並み波にさらわれ、お宮から下はただの砂浜になってしまいました。
「なぁんも、のおなってしもた……」
おとさが小さく呟くと、山のてっぺんに登り着くまで大泣きしていたミオが、けろっとこう言いました。
「大丈夫。うちのおとさのほかは、みぃんな助かるけん」
ネネコは首を傾げました。
「何で、村長は助からんとね?」
「……そいはね」
ミオはネネコににっこり笑ってみせました。いつの間にか、猫達がミオを取り囲んでいます。
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