flag 3:フラグ・ブレイカーと不幸せな幸福者《デメリット》Ⅰ

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 2120年5月下旬。  冗談みたいな異能バトルが終了し、ようやく平穏無事な日常を取り戻し、そしてなんの間違いか古河白雪と付き合うことになってから一週間ほど経ったころ。  無事退院した僕だったが、直後に控える中間テストのことを考えると、ストレスで胃が痛くなるほどに苦しみ、己の頭のレベルを嘆き、彼氏彼女関係になっても尚、止まることを知らない古河の毒舌も相まって、どこぞのハルヒなんかよりもずっと憂鬱な気分になっていた時のことだった。  僕の目の前に現れた彼女は、腰まで伸びた美しい金色の髪を揺らし、古河と良い勝負にもなるほどの上品で整った顔立ち、美貌を持っていた。  黒塗りの高級車に乗って登下校をするリッチぶり、生徒の視線を釘付けにするその姿はまさしく学園のマドンナ。  高嶺の花、というやつか。背伸びしたところで届くわけもない存在。  正直なところ、古河と出会って、そしてさらに、おこがましくも付き合うことになった僕にとっては、そこまでですでに一生に一度か二度起こるかというような奇跡が起こったようなものだったので、今後十数年はそんなおいしい機会もないのだろうな、と自嘲半分諦め半分だった。  もちろん、贅沢を言うつもりもなかったし、すでに十分身の丈に合ってない人生送っているなぁ、などと思っていた―――のだが。  ……全く。神様も愉快な遊戯に巻き込んでくれたものだ。ふとした運命の悪戯によって、僕と金色のお嬢様は出会ってしまい、どういうわけか不思議な縁が生まれてしまったらしい。  ……手も届かないような高いところにあるはずの存在に、手が届いてしまったのだった。  そして同時に、僕の人生の女性運を使い果たしてしまった―――気がした。  この物語は、ふとしたきっかけで出会った2人―――片や、平々凡々平民万歳異能系ツッコミ少年の僕こと結ヶ崎悠、片や、大手企業の令嬢であり、電撃の異能を操り――そして、暖かさを渇望した少女こと時東瑠璃という、まぁなんとも身分差のある2人のお話。
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