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1限目開始のチャイムが鳴る。
ようやく廊下に立たされるの刑から解放された僕らは、互いに綾原のいい加減さについて陰口を叩きながら教室に入った。
生徒はすでに全員着席しており、入ってきた僕らを見るなり笑いを零す。
朝から僕は恥をかいてばかりだ。どちらも僕は悪くない気がするのも強ち間違いではないだろう。
僕らが着席するなり教室のドアが再び開き、朝と変わらない綾原が入ってきた。そう言えば一時間目はコイツの授業だったな。
「あー、一時間目を始める前におめーらに連絡がある。今日からこのクラスに転校生が来ることになった」
寝耳に水、そんな様子をまざまざと露わにするクラスメート達。
全くこの教師は……どうしてこう大切なことをホームルームで言わないんだ。
と、そこで気づく。綾原は遅刻したから朝、職員室に行ってないはずだ。
転校生が来ることは予め知らされてはいたのだろうが、この教師のことだ。どうせ忘れていたに違いない。
ホームルームを終え、職員室に入ってその転校生を視認しようやく思い出した……そんな所だろう。しっかりしてくれ。
今や教室は転校生はどんな人なのだろうか、と囁きあう生徒達のヒソヒソ声で満たされていた。みんなが興奮しているのがわかる。
無論、僕に友達はほとんどいないため、ヒソヒソ話をする相手もいない。悲しくなんか……ない。
そんな雰囲気にイライラしたのか、綾原は目尻を吊り上げて口を開いた。
「るせーよおめーら。おめーらのそういうヒソヒソ声が転校生へのプレッシャーになるんじゃねーか。考えろ」
綾原の叱責を受けて、互いに囁きを止めて静かになるクラスメート達。
まぁ……確かに正論ではある。顔も知らない人間たちに期待されるだなんて果てしないプレッシャーだろう。僕だったらバックレる。
だが1つ言いたい。あんたがそれを言う資格はない。
「入っていいぞー」
扉の外にいるであろう転校生に向けて声をかける綾原。
数瞬もたたずにゆっくりと開かれるドア。
そこから姿を現したのはーーー今まで見たことのないほどの美少女だった。
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