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彼女らはまずアメリカ、イギリス、日本など主要国の上層部を徹底的に作り変えた。
汚職にまみれた国家を一度壊滅させ、再び作り直したのだ。これにより男尊女卑の世間の風潮は一気に変革した。
世界で起こっていた戦争もなくなり、国同士の争いは消えた。
さらに異能者の迫害も消えた。世界の人口の半分近くが異能者なのだから認めざるを得なくなったというのが正しいだろうか。
こうして彼女らは日常となった。
どちらにせよ急速に世界は平和へと向かっていったのだ。
ただ1つ、厄介な問題を除いて。
―――女性が全員ヤンデレになってしまったことを除いて。
ヤンデレ―――「病む」ほどに人を思慕すること。恋愛感情を中心に、誰かを愛しく思い、思い過ぎてしまうこと。
嫉妬の感情が人一倍強くなってしまった状態なのだが―――どういうわけか世界中の女性全員が、その重度もまた千差万別だが、ヤンデレになってしまったのだ。
これまた原因は一切不明。異能になんらかの関係があるのは明白だが、理由は不明なのだ。
そして新たな問題も起きた。女性による犯罪が増えたのだ。
平和になり犯罪が減ったのは事実だが、ヤンデレが原因となった犯罪が増えたのも事実。
ストーカーや逆強姦、無理心中に女性同士の殺し合い。
そんなニュースが後を絶たない。
普通にしているぶんには、異能を得る前となんら変わりはないのだが―――
人間と異能者。そんな二元的な世界へと変貌を遂げて65年。
男と女…人類と異能者の共存に世界が順応し始めてからずいぶんな年月が流れた。
そんな中、とある街に1人の少年がいた。
彼は男だった。にも関わらず能力を持っていた。
異能だが異能ではない―――そんな不思議な能力を。
少年の名は結ヶ崎 悠(ゆいがさき はるか)。能力を持っていること以外、普通の人間―――そう、異能者ではなく人間の高校生。
そして今、彼を中心として世界が回り始める。
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