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数分後、着替えを済ませた僕は食卓にいた。
有り得ないほどの羞恥心と悲壮感を抱えながら箸を進める姿はさながらリストラされたサラリーマンのように見えるだろう。
朝っぱらからついてない。いや、毎朝こんな感じなんだが、今日ほど死にたくなったことはない。いや、死にたくないから叫んだのだけれども結局死にたくなって……あれ?矛盾?
1人悶々としながら食卓に並べられた皿から目玉焼きをパクついていると、不意にリビングのドアが開いた。
「ふぁ……おはようお母さん」
「あらあら大きな欠伸だこと」
私服姿の女性……僕の姉さん・結ヶ崎裕美(ゆいがさき ひろみ)が大口を開けて欠伸を漏らしながらリビングに入ってきた。
そんな姉さんを見て、母さんが上品に笑う。
僕より二つ上の大学一年生だ。
僕と違って母さんの美人の血を色濃く受け継いだらしく、相当モテてるらしい。
おまけに通ってる大学は一流と来た。人当たりもいいからすごく信頼されてて友達も多い。
まあそれは所詮幻想なのだと、僕だけは知っている。姉さんは基本的にあれなんだよな。
それを抜きにしたら、欠点はない。どうやら僕という人間と根本的に違うらしい。本当に姉弟なのだろうか?
せめて母さんのDNAをちょっとくらい僕に分けてほしかった。
「それは無理よ悠」
「勝手に僕の心を読むな」
プライバシーの権利を主張する。
すると姉さんはニヤリと意地悪く口元を歪ませ、妖艶な笑みを作る。
「でも、私たちのDNAなら分けられるかもよ?ほら……悠の精子を私に」
「ストーーップ!近親相姦エンドは絶対認めないからなぁっ!!」
「チッ……」
「舌打ちされたっ!?」
姉さんはこういう風にからかうからまた質が悪い。
だが僕は絶対に認めない。近親相姦エンドなんて……いや、確かに姉さんは綺麗だけれども、そこはやはり身内なわけだから線引きをしなければならないわけで。
「悠、お味噌汁冷めるよ?それとも私が作ったお味噌汁……飲めない?」
「飲みます飲みます!あぁ美味しい!お代わりが何杯でも出来そうだ!」
母さんの機嫌を損ねたらヤバい。なんだかんだで母さんも姉さんもヤンデレだからな。僕は母さんの異能からは絶対に逃げられないから、怒らせたら最後、バッドエンドだ。
「あら、そう?ありがとう悠。お代わり、あと十杯はあるわよ?」
……。
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