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「おい、聞いているのか。」
五十嵐はこの理屈っぽい友人の話に辟易していた。
「えと…なんだっけ?」
「だから、サイコロの話さ。」
今井は六面にそれぞれ1~6の数字が書かれた鉛筆をくるくると動かしながら言う。
「お前は、例えばこの鉛筆の“1”が出る確率は1/6だと思ってるんだろ?」
「六面だから1/6だろ?」
五十嵐は少し苛立ちながら言い返した。
「ラプラスの悪魔。」
「はぁ?」
数字の書かれた鉛筆の頭で指差された五十嵐はそれを嫌がり手で払った。
「いいかい?この鉛筆で“1”が出るのは、偶然なんかじゃない。必然なんだ。」
「わかんねぇよ。」
「つまり、“1”が出るということは、“1”が出るような力で、“1”が出るような角度で、“1”が出るような高さで鉛筆が机に落とされた、ということさ。見てなよ。」
今井は、そう言って机に鉛筆を転がした。
今井は先程から得意気に話している。五十嵐は半ば諦めた様子で転がった鉛筆を見た。
「…“4”じゃん。」
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