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「いや、だから。」 ばつの悪そうに今井は鉛筆を再び手に取った。 「今のは“4”が出るような条件が揃ったってわけだよ。」 「…そのラプラスのなんたらってのはわかったよ。だけど、それが何の関係があるんだよ?」 五十嵐はとりあえず今井の話を切り上げるために尽力した。 今井とは今年の4月に入学して以来、つまり2ヶ月前からの友人だ。 名前が同じ“い”から始まるため、席が前後だったのだ。 高校生の友情の始まりなんて案外そういうものである。 今井は成績もよく、博識だった。 しかし、その明晰な頭脳をひけらかすために分厚い科学書を休み時間に広げたりもした。 とにかく、彼に科学者が憑依してしまうと、その得意気な講義が終わるまで待たなくてはならない。 「ホームランだよ。」 五十嵐は久しぶりに聞き慣れた実社会の言葉を聞いた気がした。 「君が先週の日曜日に打たれたホームランさ。」 「それがどうしたんだよ?」 「あれだって偶然じゃないって言ってるのさ。」 今井は小さい目をいっぱいに広げながら低い声で呟いた。
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