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「じゃあ、澪、あたしは先に行くから」
わたしが椅子に座り、コーヒーを啜ると、晶は立ち上がった。
「あれ、今日、早かったんだっけ?」
「実はね、昨日仕事やり切れなくてっ」
自分に呆れた様な声だった。
晶は何でもかんでもてきぱきやる性格だし、中途半端は大嫌い、おまけにせっかちだ。
そんな晶の口から仕事が終わらなかったなんて言葉を聞くのは初めてだ。
「珍しいね、体調でも悪いの?」
「いや、大丈夫。ちょっと疲れてるだけだよ」
そう言えば、昨日の夜もそんなことを言っていた様な……否、記憶は曖昧。
わたしは何も言わずに晶を見つめた。
心配そうな顔をしていたかも知れない。
「……何だよ、澪。あたしだって仕事が進まない日もあるの! じゃあ行ってくるから」
晶は笑い飛ばした。
そしてわたしに背を向けスタスタと歩いていく。
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