前世のこと

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「きっと、そうなるわ」 わたしの言葉に、周りの少女たちはどよめきました。 死ぬ?誰が?鱗姫!嘘よ!本当?エイコ姉さま!? 「みんな、静かになさい。はしたない」 凛、とした声で鱗姫がなだめると、少女たちは少しずつですが大人しくなりました。鱗姫は、わたしに向かってホッとしたかのように笑いました。 この少女ときたら、なぜ、死の間際に笑っていられるのでしょう! 「エイコねえさま、きっとね、」 「鱗姫、喋ってはだめ」 「姫が、死んだらね。きっと彼に会えるわ……エイコねえさまが話して下すった、彼に!あたし、あたし、それを考えたら死ぬのなんてちっとも怖かないわ!」 「やめて、鱗姫!」 その時です。 鱗姫の身体が、さらに大きく揺れました。 ゆらぁり!ゆらぁり! 激しい揺れでした。鱗姫のかろうじて残っていた鱗が、揺れと同時に剥がれ落ちます。 そして、揺れがおさまり、鱗が全部剥げ落ちたころ。鱗姫は静かに水槽の底に沈みました。 わたしはそれを眺めながら、ああ、恋とは、こういうものか。と、考えておりましたのですが、いかんせんボンヤリしてしまって、後の事は覚えていないのです。 ただ、起きた頃には、鱗姫の身体は水槽内のどこを探しても見つかりませんでした。 赤き少女たちは、それからは泣いてばかりいました。 わたしはわたしで、お話などをする気にはなれませんでしたので、ただただ水面を漂うばかりでした。 そういう訳で、鱗姫のいなくなった水槽というのは、すこぶる暗く、陰鬱なものだったのです。 それから、あの、お母様も、鱗姫がいなくなったのには大変ご傷心のようでした。
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