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数十人の男が、一人の女の子相手に押し合いで負ける光景はシュール過ぎて笑える気がした。
「意地を見せるぞッ!!」
一人の隊員が叫ぶと、全員の気持ちが高まった。
「「「オオッ!!」」」
全員の気合が重なり、気持ちがひとつになった。
すると、あやめの歩みが止まった。
「ヨシッ! 止めたぞォ!」
「「「オオオオォォォォッ!」」」
数十人の機動隊員が全力を出しているので油断は出来ない。それでもあの如月あやめを止めた事で士気が一気に高まった。
だが、
「……邪魔するんですか?」
ポツリと呟いたあやめの言葉が聞こえたのは、スクラムの先頭にいた数人だけだった。
それでも、その呟きを聞いた全員が気付いてしまった。
『如月あやめは、今初めて自分達の存在に気付いたんだ』と……。
「邪魔するなら……」
ゾクッ
機動隊員達の背筋に寒気が走った。
「こうです」
その瞬間、一気にあやめに押された。
踏ん張るとか耐えるとか、そんな気持ちなんて一気に霧散する程の力強さだった。自分達が如月あやめを押し留めるなんて、人間の身体だけで列車を止める以上に馬鹿な事だと機動隊員全員が理解した。
※※※
機動隊のスクラムが崩壊するのを、狙撃部隊はスコープ越しに見ていた。
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