第三話 キスミーテンダー

41/98
4852人が本棚に入れています
本棚に追加
/178ページ
自分に覆い被さっている網に指を掛け、あやめは一斉にその網を引き裂いた。 「馬鹿なッ!? 炭素繊維配合の網だ! 象どころか鯨にだって千切れない網だぞッ!!」 ここに来て、遂に隊長さえあやめを恐れ始めた。 網から抜け出したあやめが一歩、隊員達に近付く。気のせいか、地面が少し揺れた気がした。 ※※※ バスで学校に帰る途中、高速道路のサービスエリアでトイレ休憩をしていると、ヘリコプターのモーター音が近付いて来ている事に気付いた。 「……あれ?」 上空に見えたヘリコプターを見ていると、それがどんどんとこちらに向かって来ているのが分かった。 何事だとサービスエリアにいる人達も近付いてくるヘリコプターを見ている中、そのヘリコプターは結局駐車場の空いているスペースに降りてしまった。 「何だ何だ?」 「何かあったのか?」 「事件? あれって自衛隊のヘリだろ?」 周りの人達が様々な事を言い合っている。 僕も含めたみんなが注目する中、ヘリコプターのドアがスライドして一人の男性が降りて来た。 「オ…オイ、あいつって……!?」 「どうしてこんなトコに?」 その人物を見てみんなが驚くけど、僕はみんなとは少しだけ違う意味で驚く。 「た…谷さんッ!?」 思わずそう叫んでしまった僕を、周りのみんなが驚いた顔で見て来た。 「山岡、お前総理大臣と知り合いなのかッ!?」 サッカー部員の一人が聞いてくる。
/178ページ

最初のコメントを投稿しよう!