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そのショックからか、妖力を使い切ってしまったからか、或いはその両方か……とにかく、咲はその場に崩れる様に座り込んでしまった。
自らの最後を覚悟した咲だったが、それにまだ抗う者がいた。
「咲ちゃ~ん!」
僅かに残った妖力を使って伸ばした髪を咲の腰に巻き付け、残った髪で地面を打った衝撃を利用して瑠璃は大きく後ろに跳んだ。
緊急回避とも言える瑠璃のとっさの行動だったが、
バンッ
耳を打つ破裂音がしたと同時に、呆気なくあやめに回り込まれてしまった。
「あらら~?」
いつものトボけた口調だったが、瑠璃の頬を冷や汗が伝う。
「瑠璃……さん、貴女だけでも……逃げて下さい……」
息も絶え絶えの咲だったが、そんな咲を髪を使って脇に抱えたまま、瑠璃は「べ~」と舌を出す。
「ヤダよぉ。どーして私がぁ、咲ちゃんの言う事を聞かないといけないの~?」
普段通り憎まれ口を言いながら、瑠璃は咲の身体を抱え直す。
だがそれはつまり、咲を置いて逃げる事を否定すると言う事だった。
そんな二人をまぶしそうに細めた目で見ていたあやめが口元を緩めた。
「良い目……良い心がけです」
小さくだが、確かにあやめはそう言った。
「酔いが……醒めてきている?」
言葉を喋ったと言う事は、つまりはそういう事だった。
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