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声のした方向……近くの雑居ビルの屋上を雅人とあやめが見ると、そこには紺の袴を風になびかせている人物が腕を組み、月光を背に背負って立っていた。
雅人と比肩する長身。雅人を上回る筋肉。
そう、楓だった。
「あー……」
誰も待ち望んでいなかった楓の登場に、雅人は心の底からドン引きする。
それもその筈だ。ヤムチャや恋次が助けに来たところで、安心出来る訳が無い。
「お前の覚悟、確かに俺が受け取ったッ!! 行くぞッ!!」
雅人の気持ちなんて知る由も無く、楓は自信満々にビルの屋上から跳躍した。
「修行の成果を喰らえッ!!」
体操選手の様に空中で何度も回転し、やがて勢いを利用して飛び蹴りの体勢を取る。その造形美は仮面ライダーのライダーキックにも似ていた。
しかし、
「天魔伏滅覇王滅却竜虎撃破……ウボァーッ!!」
飛び蹴りを呆気なく避けたあやめのカウンターパンチを喰らい、金属バットで打たれた軟式ボールよりも軽く地平線の彼方まで吹っ飛ばされてしまった。
「ちっ 楓さんは簡単にカウンター喰らって遥か彼方に吹っ飛ばされるし……1ミリも戦力にならんかったなあの人……」
文字通り星になった楓を見送った後、割と鬼畜な台詞を吐く雅人。まるで何処かの美食屋の様だ。
「まぁ、最初からあの子に何の期待もしてないでしょう」
ある意味、雅人以上に楓をこき下ろしながら桔梗が雅人の隣に並び立つ。
「さぁ、始めましょう!」
あやめが手を打ち鳴らして笑った。
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