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「静華よ! 国の掟を破り、人間の国に被害を及ぼした罪……死して償え!!」
呂尚が手にした宝剣が狐の正体を現した妖狐・静華に突き刺さり、断末魔の叫び声が闇夜に響いた。
殺した妲己の遺体に取り付き、紂王を惑わして暴政を敷いていた妖狐の最後だった。
「……終わりましたな」
呂尚が傷付いた身体を引きずりながら、宝剣を渡した人物に話し掛けた。
その人物は金色に輝く髪を撫で、愁いを帯びた美しい顔を悲しみに歪めた。
「すまぬの。儂らの問題をお主らに手伝わせて」
「いえ。我々の方こそあなたの力が無ければ荒れ狂う黄河を渡れず、妲己の本性を暴く事が出来ませんでした」
呂尚に頭を下げられた美女の顔は、そう言われて尚晴れる事はなかった。
「……多くの人間が命を落としてしまった。その償いにもならぬ事よ」
自嘲する様に笑う美女を気遣い、呂尚は別の話題を振った。
「それで、これからどうされます?」
牧野で武王に敗れた紂王も、首都で自らその命を断った。永きに渡る戦いもこれで一段落した筈だ。
「フム、儂は人間界に逃げた他の同族を追う。太公望……お主は今後武王を支え、新たな国を築いていけ」
そう言い残し、美女……妖狐の王女・仙華は朝焼けに染まり始めた空に消えていった。
暗い夜が明け、太陽が昇り始めていた。
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