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※※※
「しかし、どんだけ長い仕事だと言うんじゃ」
山道を飛びながら仙華は誰に言うでもなく愚痴る。それもその筈で、かれこれ千年以上も人間界にいて、国を抜けた同族の妖狐を退治・封印してきている。
急遽王に就任した仙華にとっては初の公務だが、あまりに過酷な仕事内容となってしまっていた。
妲己に化けた静華・華陽夫人に成りすました太華・ホウジと名を変えた夕華は発見し、人間と協力してそれぞれを退治して回った。
そこまでは順調だったが、そこからが問題だった。人間界の逃げた最後の妖狐・王華だけが中々見つける事が出来なかった。それから彼此千年近く人間界を探し回っている。
「もう別の国に逃げたんじゃないか?」
ため息をつきながら仙華が自らの胸元に話し掛けると、その豊かな胸の谷間から親指サイズの小人が顔を出した。
「微かですが王華の妖気は感じますの。この国にいるのは間違いないですの」
その小人は仙華の顔を見上げながら力強く頷く。
この小人は仙華の付き人である管狐の歌花で、仙華の雑用を一手に引き受けている。
そんな得意げな歌花の態度に、仙華は両手で自らの胸を寄せた。
「だったら! さっさと! 王華の! 妖気を! 見付けんか!」
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