第二話 王女の責務と己の性〈サガ〉

4/49
前へ
/178ページ
次へ
※※※ 「しかし、どんだけ長い仕事だと言うんじゃ」 山道を飛びながら仙華は誰に言うでもなく愚痴る。それもその筈で、かれこれ千年以上も人間界にいて、国を抜けた同族の妖狐を退治・封印してきている。 急遽王に就任した仙華にとっては初の公務だが、あまりに過酷な仕事内容となってしまっていた。 妲己に化けた静華・華陽夫人に成りすました太華・ホウジと名を変えた夕華は発見し、人間と協力してそれぞれを退治して回った。 そこまでは順調だったが、そこからが問題だった。人間界の逃げた最後の妖狐・王華だけが中々見つける事が出来なかった。それから彼此千年近く人間界を探し回っている。 「もう別の国に逃げたんじゃないか?」 ため息をつきながら仙華が自らの胸元に話し掛けると、その豊かな胸の谷間から親指サイズの小人が顔を出した。 「微かですが王華の妖気は感じますの。この国にいるのは間違いないですの」 その小人は仙華の顔を見上げながら力強く頷く。 この小人は仙華の付き人である管狐の歌花で、仙華の雑用を一手に引き受けている。 そんな得意げな歌花の態度に、仙華は両手で自らの胸を寄せた。 「だったら! さっさと! 王華の! 妖気を! 見付けんか!」
/178ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4853人が本棚に入れています
本棚に追加