第三話 キスミーテンダー

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※※※ 「あやめさん」 気を失った雅人を連れて桔梗が姿を消すと、その場には竜也とあやめ二人きりになった。 「竜也くん」 あやめは竜也を何とも言えない表情で見つめる。嬉しそうな、悲しそうな、怒っている様な……本当に複雑な顔をしていた。 「誰もいない街で二人だけ……ロマンティックね」 「えっと……」 あやめの言葉に竜也は辺りを見回す。 地面は裂けたりクレーターが出来たりしているし、車や戦車が壊れたオモチャの様に点在している。多くの建物は傾き、街灯や電柱なんかは何本も倒壊してしまっている。 そのせいか、この辺りは月明かりが唯一の光源となり、普通の人には随分薄暗く感じられた。 「……ゴーストタウンみたいになってますけど」 「見て竜也くん。月が綺麗よ」 竜也の力無いツッコミは、酔ったあやめには聞こえなかった様だった。 「あやめさん。どうしてお酒なんて飲んだんですか? お酒を飲んだらこうなるって、あやめさんだって自覚してるでしょう?」 ほんの僅か……小指の先程度の竜也の非難に、あやめは唇を噛み締める。 竜也は知らない。ほとんど無理矢理、酒を飲まされたという事を……。 あやめは言い訳をしない。キッカケは確かに無理矢理だったかも知れないが、今なら普段言えない事も言えそうだからだ。 「……竜也くんが悪いんだよ」 あやめの目が座る。
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