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その瞬間、あやめから爆発した様な気が発せられた。
あやめに気の爆発は、今や日本……いや、世界でも十本の指に入る程の強さである竜也でさえ、思わず尻餅を付いてしまいそうな圧力があった。
しかし、竜也は一歩も引かない。引かずに、あやめの顔を真っ直ぐ見つめる。
やがて、あやめから発せられる気が落ち着いてくる。
「……ねぇ、竜也くん」
「はい」
「私……女性として魅力が無いかな?」
「ッ!?」
あやめの言葉に竜也は頭を殴られた様な衝撃を受けた。
普段は絶対に見せないあやめの姿。全身から発せられる気は力強いが、今のあやめはひどく弱々しく見えた。
『コンプレックスの無い人間なんて、実はほとんどいない』
そんな事は竜也にも分かっていた。竜也自身もコンプレックスの塊だからだ。中性的な顔立ちも、平均よりも低い身長も、全てがコンプレックスだった。そのコンプレックスが女性……特にあやめに対して消極的になってしまっていると竜也は気付いていなかった。
「確かに私は咲さんより家事は上手くないし、楓さんみたいにアレでもないよ!」
せき止めていた思いが溢れ出してしまい、あやめはもう止まらない。
「千鶴ちゃんみたいに素直じゃないし、瑠璃さんみたいに胸も大きくないッ!」
「………」
「星さんみたいに凛々しくないし、桔梗さんみたいに可愛くもないッ!!」
あやめの目からポロポロと涙が溢れる。
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