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「仙華さんみたいに……竜也くんを分かって上げられない……」
声を絞りながら子供の様に泣くあやめの一言が、竜也の胸に深々と突き刺さった。
強さは世界最強の一人に数えられるが、それ以外は今まで誰とも付き合った事がない十九の女の子だったのだと、竜也は改めて『解った』。
「ごめんなさい、あやめさん」
素直に謝る竜也に、あやめは激しく首を振る。
「竜也くんに謝って欲しくない! 私が……勝手に不安になっているだけだもんッ!」
強い思いが混ざって何が何だか分からなくなってきたあやめに、竜也は一歩近付く。
「分かりました。もう謝りません」
力の入った竜也の言葉に、あやめの肩がビクッと震える。一瞬、竜也に嫌われたと思ったのだろう。
しかし、竜也の目には強い意志の光が宿ってはいたが、決してあやめを拒絶する物ではなかった。それ所か、力強くも暖かい……まるであやめを包み込む大きさだった。
「……あやめさんの全てを受け入れます」
そう言うながら、竜也はあやめへと歩みを続ける。
「得意料理が肉料理で味付けが少し濃い所も、可愛い物好きでいまだにこげパンダグッズを集めている所も、国家権力も気を使う強さも……」
竜也の歩みは止まらない。
「ちょっと嫉妬深い所も、冗談みたいにお酒に弱い所も……全部全部受け止めます」
すぐ近く……手を伸ばせば互いに触れ合える距離になると、竜也は立ち止まった。
「僕はあやめさんの彼氏で…………あやめさんの事が大好きですから」
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