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「……まぁ、よく気付いたって言っておいてやるか、竜也。ちょっと遅い気もするけどな」
竜也とあやめから数百メートル離れたビルの屋上で神成が呟く。
「で、これで予定通りなのか?」
神成は胸の高さの柵に肘を乗せながら、肩越しに振り返って鋭い視線を向けた。
「なぁ、谷さん」
神成の後ろにいたのは、竜也をここまで連れて来た張本人……谷総理だった。
「………」
他の人間なら怖気ずくだろう神成の鋭い視線に晒されながらも、谷総理はハッキリと頷いた。
「ああ。これで、お前と同程度の戦力が日本にあと二人存在すると世界に向けてアピールする事が出来た」
一切の誤魔化しをしないで、谷総理はそれを認めた。
あやめに酒を飲ませ、自衛隊や在日米軍と戦わせるのは他ならぬ谷総理の発案だった。わざわざあやめに酒を飲ませたのは、そうでもしないとあやめが自衛隊や在日米軍と戦う事などしないと判断したからだった。
「核を持たない日本が他の国を牽制する為に仕方のない事だ」
「……大人の勝手だな。泣けてくるぜ」
吐き捨てる様に神成がため息をつく。
もしこの計画を実行したのが他の政治家だったとしたら、神成にぶん殴られていただろう。いや或いは、計画通りに事が運んだというのに、表情が晴れない谷総理の顔を見たからなのかも知れない。
「……ソーリダイジン様になって変わっちまったな、谷さん」
出来るだけ感情を出さない様に喋る神成。
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