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「ごちゃごちゃうっせーよ。取り敢えず死んどけ!」
飯塚は神成にボウガンを向け、引き金を引いた。
しかし、飯塚は知らなかった。目の前の男が、ライフルの弾さえ取れる人物だと……。その男にとってボウガンの矢なんて、文字通り止まって見えるという事を……。
神成は自分の顔に向かって正確に飛んでくるボウガンの矢を、左手の人差し指と中指だけで挟み止めた。
「……あん?」
何が起こったか理解出来ない飯塚の前に神成が立つ。
そして、一切何も言わず、飯塚の股間を思い切り蹴り上げた。
グチャッ
「ッッッッ!!」
両足が1メートル以上浮き上がる衝撃に、確実に『何か』が潰れた音。
飯塚は一瞬で白目を向いて気を失い、その場に転がった。
「女を抱きたかったら、来世まで我慢するんだな」
地面に転がる飯塚をゴミを見る目で見下ろし、神成は冷たく吐き捨てた。
※※※
その一部始終を遠くで見ていた女性がいた。
神成は残りの暴走族を片付けた後、木の陰に隠れていたその女性に近付いた。
「取り敢えず、やっつけちまったよ」
「ありがとうございます。これ、少ないですけど……」
そう言って、その女性は神成に封筒を差し出す。
その封筒を見下ろした神成は軽く手を振った。
「いらね。俺は……あいつが十年後とかに「昔は俺も悪かったなぁ」って笑いながら女房子供に囲まれてるのが気に入らなかっただけだからな。君の為にあいつをやっつけちまった訳じゃないから」
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