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「でも……!」
それでも引き下がらない女性に、神成は先程とは別人の様な笑みを浮かべた。
「そんじゃあさ、ひとつ俺と約束してくれない」
「約束……ですか?」
思いがけない神成の提案に女性は戸惑う。
「ああ」
「……何ですか?」
戸惑う女性に、神成は苦しい様な、悲しい様な複雑な顔を向けた。
「……前を向いて生きてくれ。今すぐは無理かも知れないけど……いずれ、今の苦しみを過去の事にして欲しい」
「………」
「男ってのはバカばっかだけどさ、あんなクソ野郎ってのはあんまりいないんだ。だから、男ってだけで必要以上に怖れないで欲しいんだ。だから、もし君が今を過去に出来たなら……」
神成はくしゃくしゃの笑みを女性に向けた。
「それが俺には一番嬉しい報酬だよ」
※※※
20○×年 8月31日。
日野(当時まだ神山)神成、高校生活最後の夏休み最終日。
誘拐された世界的大富豪、ガルシア家の令嬢、ミッシェル嬢を救出。
この事件解決をきっかけに、徐々に神成の名が世界に浸透していく。
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