第一話 幼き頃の道標

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※※※ ランドセルを自分の部屋に置く。 友達に誘われた野球の誘いを断ったのは初めてだった。 野球は面白い。みんなの中に入っても、楽しめる。でも、格闘技までは楽しくない。 あの日から、わたしの世界の色が無くなったみたいに見える。 今週の日曜日に格闘技の試合がある。……それでもう格闘技は辞めよう。 格闘技は好きだけど、誰もわたしに勝てないんだもん。続けていても意味無いよ。 神様……一生のお願いです。大和館長より強い人がこの世界にいて、日曜日の試合に出てくれますように。 ※※※ 試合当日、わたしの回りには人だかりが出来ていた。 カメラの光が眩しい。色々聞かれているけど、答える前に別の質問をされちゃう。 一人になりたくて、トイレに逃げ込んだ。 わたしは……どうして普通の女の子じゃなかったんだろう。どうして大和館長より強かったんだろう。 トイレの鏡の前で涙が溢れてきた。 「どうしたの?」 後ろから声を掛けられて振り向くと、髪の短いお姉さんが立っていた。 「何処か痛いの?」 そのお姉さんが心配そうにわたしを頭を撫でてくれる。 「……大丈夫」 久しぶりに頭を撫でられたからホントは嬉しかったけど、泣いているところを見られたから恥ずかしくもあった。
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