第三話 キスミーテンダー

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※※※ 何か大切な物を失い、大きな誤解を招いてしまった事に落ち込みながらも、制服からパジャマ代わりのスエットに着替えた僕は、夕食前に買ってきた雑誌をベッドの上で広げて読み始めた。 「何々……カップルが別れる三つの状況。その1、環境の変化。付き合い始めてからの遠距離恋愛は99%別れる……」 首を捻って考え込む。 あやめさんは春から大学生となってしまったので同じ高校には通っていないけど、別に遠距離恋愛って訳ではないよね? そう結論着けて読む進めていくと、その考えが甘いと分かった。 「なお、この場合の『遠距離』とは、単に距離だけの意味ではない。毎日会っていたのにたまにしか会えなくなったという場合も、この状況に含まれる……」 確かに、学校でほぼ毎日会っていたのに、付き合える様になってからは毎日会えなくなっちゃったんだよな。 僕の心にジリジリと焦燥感が込み上げてくる。 取り合えず、雑誌を読み進める。 「その2、消極性。草食系男子と言う言葉が生まれて久しいけど、恋愛はやっぱり男が前に出ないと別れやすい傾向にある。『草食系って、結局は度胸が無いだけ。20代アパレル系』『手を握るだけで緊張する男って引く。10代女子高生』『付き合って三ヶ月経ってもキスもしない男は紳士じゃなくてただのヘタれ。本当に◯◯◯付いてるのって感じ(笑)。10代大学生』……」 『街の女の人声』を読んでいく内に益々落ち込んでしまう。
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