第一話 幼き頃の道標

5/9
前へ
/178ページ
次へ
※※※ そして、わたしの試合の番になった。 試合場であのお姉さんと向き合う。 みんながわたしを見ている。誰かが「どっちが強いんだろう?」って話しているけど、わたしの方が強いに決まってる。 「始めッ!」 審判の人が合図をした瞬間、お姉さんに向かって突進して右正拳突きを放つ。 これで終わ……。 つまんない試合が終わると思ったわたしの身体が、後ろに向かって吹っ飛んだ。 床を転がって、仰向けに倒れた。 …………あれ? 天井が高い。 胸が痛い。 ライトが眩しい。 息が苦しい。 今のは……技? 立てない。 色んな事が頭に浮かんできた。 「不用意に仕掛けすぎよ」 お姉さんの声がする。 起き上がろうとしたけど、うまく身体が動かない。 「1……2……3……4……」 審判の人がカウントを言っている。これが10になる前に立たないと負けちゃう! 床に手を付いて起き上がろうとしたけど、腕に力が入らなくて肘が曲がっちゃう。 「5……6……7……8……」 数字がどんどん大きくなってる。 「あ…ああッ!」 身体全部を使って、何とか立ち上がる。 危なかった……。 「まだ出来るか?」 「ダイジョブ!」 審判の人に答える。
/178ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4853人が本棚に入れています
本棚に追加