第三話 キスミーテンダー

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気持ちが折れるどころか、粉砕骨折しそうになるけど、それでも震える指で雑誌をめくっていく。 「そ…その3、世界観の相違。今年大学に進学したAさんの体験談。『小さい時から走るのが好きで、中高と陸上一筋だった私。高校三年の時に同じ陸上部の二年後輩の子に告白されて付き合う事になったんだけど、大学進学と同時に知り合ったサークルの先輩と色んな所に遊びに行っている内に、足が速いだけの後輩の子が凄くつまんない奴だって分かったの。ソッコーで別れて大学の先輩と付き合っちゃいました』……」 そこまで読んでから、僕は静かに雑誌を閉じた。そして、大きく息を吸い込んで、 「ゴフッ……!」 盛大に(心の中で)吐血した。 匿名希望のAさんが、あやめさんのイニシャルのAに見えてきてしまった。 ど…どうしよう……。 ベッドの上で体育座りをしながら考え込む。 このままではあやめさんと別れる事になってしまう! 乱雑に雑誌をめくりながら対策を考えていると、不意にそのページに辿り着いた。 「パーフェクト……恋愛マニュアル?」 さっき読んでいた特集の次がこの特集だった。 藁にもすがる思いで、その特集を最初から熟読する事にした。 ……でも、その時の僕は知らなかったんです。そんな特集なんて、実際にはほとんど役に立たないという事に……。
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