第三話 キスミーテンダー

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※※※ 竜也が文字通り『机上の空論』に没頭している時、如月あやめはまだ大学にいた。 「あやめーッ!」 かなり後方から自分を呼ぶ声がしたので肩越しに振り向くと、二人の女性が手を振りながらこちらに向かって小走りで駆け寄ってきていた。 「さくら、由美、どうしたの?」 あやめは立ち止まり、全身を振り向かせた。 二人ともあやめがこの大学で知り合った同級生で、かなり仲良くしていた。 さくら……新田さくらは、地方からこの大学に通う為に上京してきた女の子だった。もっとも、一人暮らしをして遊び回りたいが為、それなりの大学に進学してきたある意味努力家といえた。緩くウェーブの掛かった茶髪に、バッチリメイクのさくらはあやめと並んでも特別劣っている様には見えない。つまり、かなりの美形と言えた。 由美……吉沢由美はさくらとは対象に、家から近いからと言う理由でこの大学を選んだ才女……だった。何故過去形かと言えば、真っ先に知り合ったさくらに引っ張り回されている内に前期の単位を落とすまでに成績不良者になってしまったのだ。もっとも、本人は本気になれば単位なんていつでも取れると思っているのでた大して気にしていなかった。さくらに比べれば地味な容姿をしているが、あやめよりはしっかり化粧をしていた。
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