第三話 キスミーテンダー

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「あやめ! さっきの現文(※現代文化研究)のノート見せて!」 駆け寄ってきたさくらが顔の前でパチンと手を合わせる。 いつものお願いにあやめは嘆息する。 「また居眠りしてたの?」 さくらから由美に視線を移す。 「由美も?」 話を振られた由美も照れた様に笑う。 「……まったく」 呆れた様に呟きながらも、あやめは肩に掛けていたバックからノートを取り出す。武術には厳しいあやめも、それ以外の事に関してはかなり甘い。 「はい」 「ありがとー! お礼にコーヒーご馳走するわ」 さくらは差し出されたノートを頭を下げながら受け取り、次にあやめの手を取って近くの学食に向かって引っ張る。 「はいはい」 されるがままに引っ張られるあやめの後ろに、由美が付いて行く。 ※※※ あやめの通う大学には幾つもの学食があり、さくらがあやめを連れてきたのはいわゆるステレオタイプの学食ではなく、オープンテラスなんかもあるカフェの様な店だった。 あやめ、さくら、由美は三人でそのオープンテラスに座った。 「何か最近、大分寒くなってきたよねぇ」 由美がマグカップに口を付ける。 「もう冬だからね」 自分のマグカップにミルク入れながら、あやめが応える。
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