第三話 キスミーテンダー

13/98
前へ
/178ページ
次へ
「クリスマスも近いから、彼氏探しも忙しくって」 わざとらしくさくらがため息をつく。 「それで授業中に居眠りしてたの?」 「へへ、まーね」 あやめの小言にさくらは悪びれもせず、舌を出す。その仕草で全て許してしまいそうな愛嬌がさくらにはある。 「あやめって彼氏いるんだっけ?」 由美が突然そんな事を聞いてきた。 「えッ!?」 特別隠していた訳ではないけど、大々的に話した訳でもない。それでも当たり前の様に聞かれたのであやめは驚いてしまった。 「そう言えば、あやめの彼氏の話って聞いた事無かったわね」 さくらの口ぶりから、二人共あやめの彼氏の存在は知っていた様だ。 「どんな人? 年上? 学生? 社会人?」 興味津々と言った様子でさくらはテーブルに身を乗り出す。 何も言わないだけで、由美もあやめの事を凝視しているので興味は深そうだった。 「えっと、学生……かな?」 さくらの言う学生とは「大学生なのか?」と言う意味だと思うので、あやめは若干言いよどむ。そもそも、この手の話題はあやめの苦手とする話だった。 「えー! この大学にいるの?」 予想通りの勘違いをしたさくらに、あやめは首を振って否定する。 「高校時の……後輩なの」 「後輩? 高校生?」 由美が目を見開くと、あやめは黙って頷いた。 「あーあー……まっ、世話好きのあやめには年下ってのも有りかもね」 妙に納得した様にさくらが何度も頷く。
/178ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4853人が本棚に入れています
本棚に追加