第三話 キスミーテンダー

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「彼氏の写メとかある?」 「……一応」 差し出したさくらの手にあやめは自分のケータイを置いた。 さくらは慣れた様子でケータイをいじり、写メフォルダを開けて中に一枚だけあったデータを開く。 そこには、家の前で直立体勢の竜也が写っていた。 この写メはあやめがケータイを新しくした際、試しに写メを撮ってみたいという名目で撮った唯一の写真だった。そのお願いをしたあやめもかなり緊張したのだが、お願いされた竜也も緊張しているとガンガンに伝わってくる一枚だった。 「これは……超高校級の草食系男子ね」 さくらの背後に回り込んでケータイを覗き込んだ由美がポツリと呟いた。 「だね。あやめ、こんな男の子が相手なんだから、あんたの方から上手くリードしてあげないと進展なんてしないわよ」 由美の言葉にさくらが付け加える。 「そ…そうなの?」 「そう! もっと自信持ってリードしなくっちゃ」 さくらはケータイをあやめに返す。 「自信、か……」 思わず、あやめは俯いてしまう。 実は、如月あやめを知る者の多くが誤解している事がある。 成績優秀、品行方正、才色兼備、質実剛健……様々な言葉で讃えられるあやめだが、本人は決して自信家ではない。勿論、武術や強さという点ではそれなりの自負はある。
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