ケンソン。短編集『序』～まごころを君に～

第三話 キスミーテンダー

自信が無いのは、いわば『女性』としての部分だった。

……まぁ、大半の女性にとってはそれでも「ふざけるなッ!!」と鼻息が荒くなる所だが、これに関しては竜也が置かれている特殊な環境のせいとも言えた。

仙華を筆頭に、咲、瑠璃、星、(本気になった)桔梗等、あやめの目から見ても個性的で魅力的な人達が竜也の周りにはいる。

家事はあやめも出来るが、子供の頃から狭い部屋で住んでいた影響で、効率良く作業は出来ない。効率良くしなくても、狭いので簡単に終わってしまう家事しかしてこなかったからだ。料理に関してもマニュアル通りの作り方しか出来ず、特別下手でも特別上手くもない。美味しさだけでなく、栄養バランスや彩りまで考え、無限とも言えるレパートリーを持つ咲とは比べるまでもない。

容姿も元の素材は飛び抜けて良いのだが、オシャレとは無縁の生活をしてきたのでほとんど素材のままだ。それでも十分その辺にいる女性よりは魅力的だが、人外とも言える(実際人間ではないけど)容姿の仙華達には及ばない気がしている。特に、グラビアアイドル並のスタイルと容姿をしている瑠璃。その胸に対しては嫉妬ではなく、憧憬の念を禁じ得ない。