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胸が痛いけど、まだ何とか動ける。
お姉さんは余裕の顔でわたしを見ていた。
「今の……何ですか?」
試合中なのに、お姉さんに思わず話し掛けちゃった。
「今の? 合気って技だよ」
お姉さんがニッコリ笑いながら教えてくれた。
合気? 初めて聞いた技だ。
「あやめちゃんの攻撃に、あたしの攻撃を加えた威力をぶつける技だよ」
お姉さんの説明に、やっと何が起こったのか分かった。
わたしは今、お姉さんにやられちゃったんだ。
初めての痛みにちょっとの悔しさと、凄くの嬉しさがある。
「さ、まだ時間はあるよ」
お姉さんの言葉が、わたしにはとっても嬉しかった。
※※※
試合時間いっぱいまでお姉さんと戦えた。
パンチもキックもわたしの方が強いのに、一度もお姉さんには当たらなかった。でも、お姉さんのパンチとキックはわたしにバンバン当たって、あっちこっちが痛くなった。
試合は引き分けだったけど、全然お姉さんに勝てるとは思えない。
「今日はありがとうございました」
試合が終わった時、お姉さんに頭を下げた。
「あやめちゃんも凄く強かったよ。五年経ったらあたしでも勝てないかも」
お姉さんが笑いながらそう言ってくれた。
……やっぱり、格闘技って……武道って面白いな!
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