第一話 幼き頃の道標

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胸が痛いけど、まだ何とか動ける。 お姉さんは余裕の顔でわたしを見ていた。 「今の……何ですか?」 試合中なのに、お姉さんに思わず話し掛けちゃった。 「今の? 合気って技だよ」 お姉さんがニッコリ笑いながら教えてくれた。 合気? 初めて聞いた技だ。 「あやめちゃんの攻撃に、あたしの攻撃を加えた威力をぶつける技だよ」 お姉さんの説明に、やっと何が起こったのか分かった。 わたしは今、お姉さんにやられちゃったんだ。 初めての痛みにちょっとの悔しさと、凄くの嬉しさがある。 「さ、まだ時間はあるよ」 お姉さんの言葉が、わたしにはとっても嬉しかった。 ※※※ 試合時間いっぱいまでお姉さんと戦えた。 パンチもキックもわたしの方が強いのに、一度もお姉さんには当たらなかった。でも、お姉さんのパンチとキックはわたしにバンバン当たって、あっちこっちが痛くなった。 試合は引き分けだったけど、全然お姉さんに勝てるとは思えない。 「今日はありがとうございました」 試合が終わった時、お姉さんに頭を下げた。 「あやめちゃんも凄く強かったよ。五年経ったらあたしでも勝てないかも」 お姉さんが笑いながらそう言ってくれた。 ……やっぱり、格闘技って……武道って面白いな!
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