第三話 キスミーテンダー

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マ…マズイ……! 肘掛けに肘を乗せ、必死に眠気に耐える。 昨日はほとんで寝てない上に、映画が驚く程つまらない。つまらないと言うより、根本的に僕に合っていない気がする。 人種差別を取り扱った重苦しい内容で、教科書にも載っていない様な出来事を深く深く掘り下げていた。 まだ公開して一週間にも関わらず、空席の方が多い座席がこの映画の世間一般の評価を物語っている。 映画館特有の薄暗さに、映像自体も暗いので眠るには最適の暗さになっている。それでも三十分間眠気に耐え、そして……結局僕は……力尽きて寝てしまいました。 ※※※ あやめさんに起こされたのは、スタッフロールも終わって館内に照明が点灯されてからでした。 「竜也くん」 「あ……」 言い訳出来ない程完璧に居眠りしてしまった。 「……もう出よう」 「……はい」 怒っているとも悲しんでいるとも言えない、何とも言えないあやめさんの表情に僕の胸は締め付けられる。 それから僕達はデートを続けましたけど、何処かギクシャクしていて折角あやめさんといるのに、どうしても「楽しい」と言えない時間が過ぎていきました。 そして、あやめさんが勧めるまま、ムーンバックスで休憩する事にしました。
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