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そして、僕は肩に腕を回されて店の端っこに連れて行かれた。
「竜也、お前姉貴に何したんだよ!」
あやめさんに聞こえない様にか、小さな声で雅人がそう言ってきた。
「何って……」
今日の失敗を思い浮かべ、口ごもってしまう。
そんな僕を見て、雅人が深いため息をつく。
「ハァ……どうせお前の事だから、何かの雑誌に書いてあったデートプランをそのまま実行したりしたんだろ?」
ドキッ
雅人の指摘に心臓が跳ね上がる。
「ど…どうして分かるの!?」
驚く僕に、雅人はニッと唇の端を上げる。
「俺が何年お前のダチやってると思ってんだよ。つーか、そんな事より姉貴の事だ」
改めて雅人が僕を引き寄せる。
「お前はお前らしく行けばいいんだ。くだらない情報に踊らせる必要はない。ただ、一歩踏み出せばいいだけだよ」
「雅人……」
雅人のアドバイスを受けて頑張ろうとする気持ちが再び盛り上がってきた……けど、
「あやめさん!」
振り向いてさっきまであやめさんが座っていた席を見たけど、そこには誰もいなかった。その近くに立っていた桔梗さんがヒョイと肩をすくめた。
「あやめなら帰ったのー」
「………………え?」
思わず桔梗さんに聞き返してしまった。
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