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実際問題、あやめは初めて付き合ったのが竜也だった。また、高校時代は周りがあやめを変に特別視して、その手の話題を振らなかった。その為、あやめは男女の機微に極端に疎かった。それこそ、一応仙華達と接してきていた竜也よりも疎いと言えた。
目に見えて落ち込んでくるあやめを見て、由美はある提案をしてきた。
「少しの間、距離を取ってみたら?」
「え?」
「距離が近過ぎると互いの顔が見えないみたいに、気持ちが見えなくなっているだけかも。だから、クリスマスまで会わない様にするとか」
経験豊富な……少なくとも自分よりは遥かに経験豊富な由美のアドバイスに、あやめの心が揺らぎ始める。「別れろ」と言われた訳でもないので、尚更だった。
その時、バタバタと慌ただしい足音を立てて、さくらがあやめや由美の座る席に走ってきた。
「やったよ、由美! あやめ!」
ひどく興奮した様子のさくらに、由美は訝しげな視線を向けた。
「どうしたの、そんなに慌てて」
(どうせ大した事ないだろう)と思っているのが、その口調から伝わってくる。
しかし、そんか由美の口調に気付かず、さくらはピースを由美とあやめに向けた。
「……今時ピース?」
呆れる由美を無視して、さくらが口を開いた。
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