第三話 キスミーテンダー

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「T大の人達と合コンを取り付けたよ!」 T大……日本の最高学府と言われる大学だ。成績優秀なあやめでさえ受験する事さえ諦めた大学だった。 「えッ!? 本当ッ!?」 由美も驚いたみたいだった。 「ホントもホント! ただ、向こうは三人みたい何だよねぇ」 「つまり、私とさくらと……」 由美とさくらの視線があやめに向けられる。 「………………え? 私ッ!?」 二人の視線の意味に気付いたあやめが、驚きに目を丸くする。 「お願い! 参加するだけでいいから!」 パチンと目の前で手を合わされ、さくらは頭を下げてくる。 「いや、でも……」 「彼氏以外の男性と話すのも、ひとつの経験だと思うわよ」 「……そうかな?」 「お願い、あやめ! このチャンスを逃したくないの! 友達助けだと思って!」 畳み掛ける様な二人の説得に、 「参加するだけだからね」 渋々あやめは了承してしまった。 そしてあやめの合コン当日、竜也は県内にいなかった。 ※※※ 「ワリィな、山岡」 後ろから声を掛けられたので振り向くと、同じクラスの吉田くんが立っていた。 「うん、別にいいよ。今日は丁度暇だったし」 曖昧に笑いながら返事をする。 今日はサッカー部の練習試合の(参加する方の)応援を頼まれたんだ。練習試合と言っても何十年も続いている伝統試合で、勝敗はサッカー部の今後のモチベーションに関わってくる大事な試合との事だった。
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