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「ま…まぁ、あやめが飲まないなら無理には勧めないよ! さ、女同士でずっと話してる訳にはいかないでしょ!」
気を取り直してさくらが男達に話し掛ける。
これがもし高校時代なら、生徒会長として注意をしただろう。だけど、今のあやめはそんな役職にいない。
(川原さんなら、そんな事とは関係無く注意するんだろうな)
あやめは高校時代に、自分に戦いを挑んで来た同級生の事を思い出していた。
※※※
DFが抜かれてペナルティエリア内で、相手の選手と一対一になってしまった。
「山岡! 前に出ろ!」
「前?」
吉田くんのアドバイスの意味が分からなかった。
後で聞いたけど、この場合は前に出て相手にプレッシャーを掛けながらシュートコースを塞ぐのが定石らしいけど、その時の僕にはそんな事は知らなかった。
「ヘッ、素人かよ!」
相手の選手が笑いながら、足元のボールを蹴る。
「素人にゃ取れねぇボールだ!」
自信満々だったけど、ボールは右上のゴールギリギリに放たれるのが分かった。
「ヨシッ!」
余裕を持って取れると思ったけど、そのボールが急激に曲がった。
あ……!
「素人は変化に対応出来ないだろう!」
それが自信満々の理由だったのか。でも!
とっさに反対方向に跳び、ガッチリとボールをキャッチする。
「歩法に比べればどうって事ない変化ですね」
キャッチしたボールを軽く投げて、センターラインにいた味方にパスをした。
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