第三話 キスミーテンダー

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「ま…まぁ、あやめが飲まないなら無理には勧めないよ! さ、女同士でずっと話してる訳にはいかないでしょ!」 気を取り直してさくらが男達に話し掛ける。 これがもし高校時代なら、生徒会長として注意をしただろう。だけど、今のあやめはそんな役職にいない。 (川原さんなら、そんな事とは関係無く注意するんだろうな) あやめは高校時代に、自分に戦いを挑んで来た同級生の事を思い出していた。 ※※※ DFが抜かれてペナルティエリア内で、相手の選手と一対一になってしまった。 「山岡! 前に出ろ!」 「前?」 吉田くんのアドバイスの意味が分からなかった。 後で聞いたけど、この場合は前に出て相手にプレッシャーを掛けながらシュートコースを塞ぐのが定石らしいけど、その時の僕にはそんな事は知らなかった。 「ヘッ、素人かよ!」 相手の選手が笑いながら、足元のボールを蹴る。 「素人にゃ取れねぇボールだ!」 自信満々だったけど、ボールは右上のゴールギリギリに放たれるのが分かった。 「ヨシッ!」 余裕を持って取れると思ったけど、そのボールが急激に曲がった。 あ……! 「素人は変化に対応出来ないだろう!」 それが自信満々の理由だったのか。でも! とっさに反対方向に跳び、ガッチリとボールをキャッチする。 「歩法に比べればどうって事ない変化ですね」 キャッチしたボールを軽く投げて、センターラインにいた味方にパスをした。
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