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※※※
「ちょっとこの娘、今彼氏と上手くいっていないんだー」
大分酔いが回ってきたさくらが、あやめの肩を抱きながら突然そんな事を言い出す。
「ちょっと、さくら!」
あやめが文句を言うが、まるで通じていない。
諦めて由美の方に顔を向けると、由美も顔を真っ赤にしていた。二人共、不自然に酔っ払っている様に見えた。
「そうなんだぁ。俺なら君みたいな可愛い娘を悲しませたりしないけどな」
そう言って理解ありそうな男と言わんばかりに男が微笑むが、あやめの心には全く響かない。むしろ、一層心労が増した様な気がしていた。
「あやめちゃん、さっきから全然飲んでないじゃん」
(あやめ……ちゃん!?)
あまりの馴れ馴れしさにあやめの眉が寄る。竜也にさえ、「ちゃん」付けで呼ばれた事が無いのにと怒りが込み上げてくる。
「いえ、もうそろそろ帰りますので」
それでもさくらや由美の顔を立てて、失礼にならない様に返答する。
「あ、そう。じゃあ、最後にこれ飲んでってよ」
男は濃い乳白色の液体が入ったグラスを差し出す。
「……これは?」
「さっき間違えてコーヒー牛乳頼んじゃってさ。誰も飲まないし、捨てるのも勿体無いから飲んでってよ」
男は困った様に苦笑する。
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