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※※※
警察や消防が市民を避難させている中、暴走したあやめがゆっくりとした足取りで繁華街を闊歩していた。
『自衛隊の到着まで時間を稼げ!』
マイクから発せられた命令に、ジェラルミンの楯を持った数十人の機動隊があやめを取り囲む。
「竜也くーん、どこー?」
虚ろな瞳で辺りを見回すあやめは、機動隊がまるで見えていないみたいだった。
「………ッ!」
機動隊全員が息を飲む。この世界にいて、如月あやめの事を知らない者など一人もいないからだ。
フラフラとした足取りのあやめに近付かれた一人の隊員が、楯をかざして両足でしっかりと踏ん張る。
しかし、あやめの歩みは全く変わらなかった。
ズズズズズズズッ
ゆっくりとしたスピードのトラックに押される様に、楯をかざした隊員が後ずさる。
「お…押されるッ!!」
鍛えられた筋肉で80キロを越える隊員が、50キロを下回る女の子との押し合いで全く相手になってない。そもそも、あやめに取っては押し合いのつもりさえ無い。
『か…確保ッ!!』
マイク越しの命令を受け、一斉に隊員達があやめに殺到した。
しかし、ラグビーのスクラムの様にひとつの塊となった機動隊員達との押し合いでさえ、あやめを止める事は出来なかった。
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