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「近隣のマンションの屋上から目標を捕捉。距離……約200」
『了解、狙撃の指示があるまで待機。……機動隊が稼いでくれた時間を無駄にするな』
「了解」
狙撃隊員は呼吸をゆっくりとしながら、神経を張り詰める。
一分の油断も無くスコープの中に如月あやめを捉える。
だが次の瞬間、スコープ内から如月あやめの姿が消えた。
「何ッ!?」
神に誓えるが、隊員は油断どころか瞬きさえしていない。
「目標喪失。ただちに索敵を始めます」
無線機の向こうの作戦本部にそう報告したが、無線機からの応答はさっきまでの事務的なものではなかった。
『オ…オイ……後ろ……』
「後ろ?」
言われるがまま、隊員がスコープから顔を離して振り向くと、そこには如月あやめが立っていた。
「……な…に?」
最初、隊員は理解出来なかった。数瞬前まで200メートル先にいた目標が、自分の背後にいる今の状況が……。しかも、ここはマンションの屋上、十階だというのに。
「遠くから狙うなんて悪い人です」
目標が……如月あやめが……ニコーと笑う。
「そんな悪い人は、関節をこっちにエイッ……です」
「ウ…ウワァァァァァッ!!」
作戦本部の無線機に最後に飛び込んできたのは、狙撃隊員の断末魔だった。
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