手紙

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7/28 今日は電話をありがとう。 遅い時間に掛け直してごめんね。 昨日、いや、おとといだね、この手紙を書いていたから久しぶりの感じがしなかったよ。 お盆に帰れなくなったの、本当にごめんね。 全く俺は親不幸どころか、ご先祖様不幸だね。 親父が死んでから母さんは働きながら俺を食わせて育ててくれたのにさ、 中学高校は、本当ろくな息子じゃなかったよね。 俺は本当に世間知らずで大学に入っていろんな奴と知り合ってさ、 やっと母さんの苦労がわかったんだよ。 本当ばかだよね。 大学の連れがさ、授業料とか全部自分で払ってるってやつがいて、 そいつと仲良くなっていく内に自分が本当ゴミみたいに思えたよ。 俺、一人で散々泣いた夜があってさ、 その次の日、母さんに大学辞めて働くって言ったんだよ。 そしたら、母さん、 前の晩の俺以上に泣いて、「辞めないでくれ」って言ったんだ。 それで俺、もう母さんに迷惑も心配もかけちゃいけねぇって心の底から思ったんだ。 それなのに就職してからこの様だよ。 真面目に働いて、働いて働いて、 休みはねぇは、睡眠時間もねぇ、飯を食っても何の味も感じないしね。 なんだか俺はこの3年間で人じゃなくなったような気分だよ。 実家にもなかなか帰れなくて本当に悪いと思ってる。 母さんが送ってくれる米や野菜もほとんど腐らしちまってるんだ。 コンビニ弁当を流し込むのが俺の食事でさ、最近はそれさえも仕事のようにこなしてるよ。 その腐らせた野菜を見る度に情けなくなって自分を殴りたくなるんだ。 母さん、本当にごめんよ。
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