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数分後、教室に入ってきたてんちゃんは必ずあたしの横を通り過ぎる。それはこの一言の為。
「おはよう、朝子」
幼なじみの特権はたったこれだけ。
それでもあたしは生きていて良かったと思える。今日も1日幸せに過ごせる。
あぁ、いけない。キャッチボールを返さきゃ。
余韻に浸るのはその後だ。
「内田くん、おはよう」
うん、今日も完璧な他人行儀。最高の幼なじみを持つと、回りへの気配りも楽じゃない。
きっとあたしはこんな毎日を一生送るのだろう。そう思っていた。
だから……まさかこの日、静な水面に小石を投じる出来事が起こるなんて、予想もしていなかった。
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