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その日の天気は快晴。
雲さえなく、青青と澄みきる空から輝くような陽光が大地を照らす。
ここは東側の大陸を支配する大王国のラーフィア王国の城下にある王立市街モリノ。
その中心にあり、真っ直ぐ城まで道が延びる最終地点。
円形広場のど真ん中にそびえるはその市街一番の芸術家が造った噴水のがあった。
人々が楽しそうに語り合い行き交う。
まるでここには争いの文字がないほど平和だ
。
「…暑いねぇ」
わりと気だるくぽつりと男は呟く。
ちょっと猫背気味に噴水の縁に腰かけた濃紺だがやや黒に近い色の少し癖のある髪にラフな恰好の若い男。
「いやいや、まだ涼しいと思うわ。」
にっこりと幼さの残る微笑みをしながら、さらさらした感じの薄黄緑色した髪を腰辺りまで伸ばした彼女は若い男の隣でさも何を楽しんでいるかのような弾んだ声だ。
この彼女が若い男の首にナイフさえ当てていなければ倦怠期を迎えつつあるちょっとかわいそうなカップルに見えるんじゃなかろうか。
首にあてがわれたナイフは嫌らしいくらい鈍色を放つ。
「…お前が何したいのかはわからなくもないが…
とりあえず、公衆の面前でこれはないだろう。」
これと指差したのは喉元。
あわてふためいたり、恐怖したりしないところから見て余程なれているのではないだろうか。
この非日常な現状を。
「い・や・だ。
これは置かないからな!
置いたら負けじゃないか!
そうしたらお前と約束した?
私の動く原動力のになるアップルパイはどうなる!」
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